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路地裏のパン職人

  • アダムリード
  • 8月24日
  • 読了時間: 2分

更新日:8月28日

街の中心部から少し離れた知る人ぞ知る路地裏に小さなパン屋がある。

看板はなく、ただ焼きたてのパンの香りがこの店を初めて訪れる客を導く唯一の道しるべだ。


店を切り盛りするのは70歳を超えたベテランの職人。


年季の入ったエプロンをつけ、小麦粉にまみれたその手は

まるでパン生地の一部であるかのように見えた。

彼の作るパンはどれも特別な形をしているわけではない。

だが、一口食べれば誰もがその温かさと優しさに驚かされる。


私は数日間にわたって店に通い続けた。

味に惚れた。こんなおいしいパンは食べたことなかったからだ。

いや、なによりこのパン屋を紹介したかったらからだ。


大きなオーブン、年季の入った作業台。

どれもが、彼の長い歴史を物語っているようだった。

きっと何か秘訣があるのだろう。私はそう思ったが

彼が教えてくれたのは予想外にシンプルな答えだった。


「特別な材料も、秘密の製法もない。ただ、パンと向き合う時間だけだ」と、彼は微笑んだ。

この言葉に私は少しだけ胸が締め付けられるような気がした。

以前の私は常に時間に追われ、どれだけ記事を量産できるかがすべてだった。

速報性、話題性。どれもが重要だと教えられてきた。


彼の手は焦ることもなく、ゆっくりと生地をこねる。

パンが発酵するのをじっくりと待ち、一つひとつに愛情を込める。


そうして焼きあがったパンは、どこか温かくて優しい味がする。

それは、彼がパンに注いだ、かけがえのない時間そのものなのだろう。

それ故にもったいないと感じる、彼からは欲を感じない。

広告などの工夫をすればもっと繁盛するはずだからだ。


この後取材を進め、改めて記事を書こうと思っている。-アダムリード

 
 
 

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